子育てコラム

よりよい親子のコミュニケーションのために

2007.12.11

コミュニケーションってひとりではできませんよね。でも本当はコミュニケーションは2人ででもできないのです。

ニュースなどで、よくいつも母子二人だけで会話がなかった等、報道されたりしてますよね。また、いつも会社で遅くなるおとうさんが、「よーし、今日はいっぱい話するぞ」って、りきんで、こどもの前に座っても、会話にならなかったってこと、よくありますよね。

そうなんです。コミュニケーションには、実は、もう1つ、第3項と呼ばれるものが必要で、その3者によって、会話が成り立つのです。これを3項関係と呼んでます。そういえば、会話にならなくて困ってしまったおとうさんを助けに入ってくれるのがおかあさんで、おかあさんという第3者のかかわりでこどもと話ができるようになりますよね。いつもおかあさんとこども二人だけだと、話す内容が尽きてしまって、会話がなくなっていくのです。

コミュニケーションには、話題となる第3項が必要で、それは人でもいいし、モノでもいいんですね。

3歳児健診でことばの発達の検査に「おかあさんが指さす方をお子さんは見ますか」という質問があります。どうしてこれがことばの発達に関係しているのでしょうか。お母さんはかならず「あっ、電車だ」とかいいながら、電車の方を見ながら指をさしますね。そしてこどももそちらを見ます。これを同時注視と呼びます。そしてきっとそのあと、ふたりは、顔を見合わせてこういうでしょう。「電車みえたなあ!」、これはお互いが同じものを見たんだと言うことを確認しています。これを相互理解といいます。そのあと「すごく速いなあ、乗ってみたいなあ」なんて、いう会話が生まれるでしょう。二人に同じ気持ちが芽生えたのです。これを情緒の共有といいます。

同じものを見、同じものを見つけたお互いに気づき、お互いに同じ気持ちが流れる・・この素敵な一連の行動を共同注意と呼んでいます。そしてこれがまさにコミュニケーションの本質であり、言葉はその必然から生まれてくるのだから、これが言葉の発達なんだと納得していただけると思います。ここでも、電車という第3項が親子の会話に大きな影響を与えているのがわかりますね。

そうコミュニケーションは、人と人が何かを通してつながることです。そのつなげる何かがなかったら、つなげようとする気持ちがなかったら、コミュニケーションは生まれないのです。もしお母さんが、電車を指さしながら、そっちを見ていなかったらどうでしょう。こどもは嬉しそうに電車を見るでしょうか。見たことを確認しあわないで、そのままにしていたら、こどもはその嬉しい発見を誰と一緒に喜べばいいのでしょうか。

英語等の言語学習がコミュニケーションだと誤解されている部分がありますね。いくら英語のビデオを見ても、ビデオはこちらの言葉を受け止めてはくれません。言葉は学習されてもコミュニケーション力は養われないのです。

そういえば、最近、こどもの暴力、攻撃行動が増えています。この攻撃行動も実は、コミュニケーションの1つです。そしてそれはコミュニケーションを暴力でしか行えないこどもたちのこころの問題でもあるのです。攻撃行動は、親が暴力で人に言うことを聞かせている場面をモデルにしたり(夫婦げんかはこどもの前ですると影響大きいですよ!)、親がこどもに暴力を振るいそれが原因で他のこどもに暴力を振るったりします。自分の感情をコントロールできる学習をする機会もなく、第3項も使えない直接的な表現が暴力です。

そして、そうした暴力の背景に、自分が認められていない、もっと認めて欲しいのにという気持ちが潜んでいることがわかっています。コミュニケーションで一番大切なことは、「あなたがそこにいるってこと、ちゃんとわかってるよ!あなたはそこにいていいんだよ!あなたがそこにいること自体が素敵なことなんだよ!」って伝えることではないでしょうか。これはお互いの自己肯定感を強めるということでもあります。

「○○ちゃん、今、悲しいんだね。こういう気持ちなんだね!」親としてこどもの気持ちをしっかり理解し、こどもが自分の気持ちを理解し受け入れられるように、働きかけることが親子の子コミュニケーションの大切な意味ではないでしょうか。

「うん!」そう満面の笑みでほほえみかけてくるこどもの笑顔が、親にとっては、何者にもまさる宝物であり、生きていくエネルギーになりますものね!

親子、お互いがお互いであるために、自己肯定的でありつづけるために、素敵なコミュニケーションこそがその秘訣だと思います。